ムーンライトノベルズ作品感想 : ２件 （BL) 【醜悪モブ男の要らないモテ期】【頭の打ち所が悪かった僕の話】

総評　<とても面白いが…>

★醜悪モブ男の要らないモテ期

作者：蒼真　　全１０１話

【あらすじ引用】

　醜く太った身体、青白く弛んだ顔。ルノは醜悪なモブ男。父親に迫害されて暮らすルノはヒロインの聖女に懸想し、攻略対象の王子に死ぬほどボコられる、予定だった。 ９歳のとき、焚き火の側で転んだとたん、奇妙な記憶が蘇った。自分が火事で焼け死んだ記憶だった。以来、少し成長した精神年齢のおかげで、ルノは聡明な少年に育った。絶世の美女だった母に似た容姿は、太りさえしなければ無駄に美しかった。おまけに、リュウラ王国は同性愛や同性婚が許される国だった。

【なろうチート生産系美少年主人公】

ムーンに来てよくわからないまま色々夢中で読み漁った時、悪役令嬢の１８禁verはまあまああったんだけど、なろう系チート異世界冒険ものはあんまり当たらなかった。これを読んで、ああこれは良い異世界チートR１８だなあと満足した。確かに主人公が男の方が、捗るね。探すべきはBLだった。かといって、これ以降読んだチート系で印象深いのはそんな多くないんだけど…

これは完結してるのも、お薦めポイント。

タイトルについてる醜悪顔は、幼少期にすぐ克服してシンデレラ要素はさっさと済むので、悪しからず。多分、淡々としている所が一番好みだったと思う。だけど後半はかなりの爆弾が……。これは後述。

錬金クッキングがメイン。読み流してしまうけど、でも考えてみるとそこが一番おもしろかったな。名称や作り方も美味しそうだなと想像してしまう。
チート多めだけど、読みやすかった。チートを持っていて、その影響がよくわからないままにこにこ披露してしまう「何かやっちゃいました」系。周りがフォローするやつ。一応、ケーキ屋さんとかも一回限定で開くけど影響力からも大々的な成功を収めない。（幻の味化する）バリバリ無双でやっちゃうよっていう感じではない。
派手ではないのが良かった。あと実は転生知識を使っていたり、18禁乙女ゲーの世界が匂わせてあったりするが、正解がわからないし、知識チートが錬金クッキングの時にしか出てこないのも好き。今回読み返すまで転生要素忘れてたぐらい。

【恋愛のそっけなさよ】

恋愛っけは、カップリングになるけど薄めです。多分作者が、恋愛描写に興味がないのか書きたくないのかetcて感じが露骨かも。と思っていたけど、そもそもメインカプに作者が興味なかった可能性も……

主人公は逆行したモブ男だけど、美少年でいい子に成長。錬金と美味しいものを生み出すことのみに興味がある主人公なので、研究肌でかわいい。

攻めも面倒見がよいイケメンでいい感じ。２人が師弟関係で同居してて、普通にめちゃくちゃいい雰囲気で可愛かったんだけど、急にページをめくると好きになっていて吹いた。

こりゃあ恋愛に興味のない人の書き方だよな……

攻めが主人公を好きになるのは要素的にわかるけど（料理、容姿、性格）、主人公の情緒が理系というかよくわからないなあ。このタイプで結婚までするかな。いや何年もこんな親密なんだからくっつくのはわかるんだ。主人公の恋心の経過がなかったなあって。

錬金についての描写は長いのに、心の機微を結果だけ書くというところが、ちょっと男性的だと思った。
まあでもそういう所がこの淡々とした雰囲気を作っているので、そこはそれぞれの好みなのかもしれない。

【後半にひっかかってブクマ外そうかと思った】

婚約して逃げるあたりから、ちょっとチグハグさが目についてしまった。錬金クッキングは相変わらず面白かったんだけれども。

逃避行パートは、冒険パートも兼ねててオムニバスな事件が起こるんだけど割と雑なんだよね…。

　まず変なAV撮影事件は思わせぶりな探偵女がうざかったし、カプを進展させる事件なら撮影までやるべきだと思いました。
半端やん…探偵女の記憶しかない。

　赤い蝶々事件は、文章のカットの仕方が妙で戸惑いまくった。狩人が生きているなら、同じページにいれてくれて良いのに。変に武具を見つけて死んだ感出して女に会うシーンになってるし、肝心の薬はもういらなくて…とかオチがよくわからすぎて草。おまけにカプに絡まない事件すぎる。

とある町に寄って足刺され事件は、ちゃんとカプと絡んでてよかった。

で、やっと結婚。集大成？のケーキ店も今イチ上手くいったというには短かったけど、名声を得るタイプの話じゃないからこれはいいのかもね。
総じて恋愛エピが薄かったなあ。逃避行なんだから愛がこう高まったりエピソード増えそうなものだけど。基本的にお似合いで好きなんだけど、やっぱこのカプの恋愛に興味なさげだなあ。

その最たるものが、急に王子が参戦してきたと思ったら、うざ過ぎるサイコ近親モンペおじさんとくっついた件ですよ。主人公と同じ顔フェチな王子はわかるけどさ…
このサイコカプ同士のどこに萌えがあるんだ？

いやサイコカプに萌える人がいるのはわかります。

萌えは十人十色ですよね…。

自分を寝取ろうとした犯罪おじさんが、受けになってサイコ王子に愛され、新婚の城に押し掛け同居する話に萌える人もいるかもしれない。

でも作者がそれに答えたのか作者の萌えなのか、あっさり終わった後延々と番外編がサイコカプって……

興味がなさすぎて吹いた。

絶対マイナーすぎるカプだろアスペ同士って…

読者の読みたいものは圧倒的に、メインカップルのラブい話じゃまいか。

ポカーンヌ。

そもそもキャラにとって重要な名前を、さらっと変えたまま普通に続けるところもよくわかんなかったです。

最後の最後で作者とカプ観とかが合わなすぎて、ブクマを外そうかと思いましたが、前半の錬金クッキングは面白かったので思い直して維持。なろう系生産チートBLとしては、やっぱり王道で良い。

基本面白かったんだけどなあ。

最後にポイズンクッキングが潜んでいた話でした。

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総評　<ユニーク！>

★頭の打ち所が悪かった僕の話
作者：むらさきちかーむ　全２６話

【あらすじ引用】
うっかり記憶を無くした僕が 見た目はいいのに口の悪い彼に支えられながら 僕に戻るまでの間、 僕として過ごした短い日々の話。

【美醜逆転の筈が価値観の逆転】

最初は普通の記憶失ったすれ違いものやろなと思ってたんだけど、途中から、攻めがガチでオカマキャラなんだな…って思って、ああ好みと違うなって流し読みしてたんだけど、次第に受けがすごくない？って気持ちがむくむくして、最終的にすげえわ、主人公スパダリすぎ、
こりゃいいぞ、となった話。

美醜逆転なんだけど、こういう攻め方はよいな。
美醜逆転ものって、ブスよりの主人公が超絶美形に格上げされ、イケメンに愛されるってやつでしょ。これって、とりえもない平凡な女の子が、何故かイケメンに溺愛されるとノリは一緒だよね。でも美醜はそこに、ただしイケメンは差別されて卑屈というヒーローの枷をつけてるから、奴隷幼女を買うのと同じ「相手を下げる設定がやらしい」という感覚がある訳ですよ。確かに理由もなく愛されじゃなくて、美人だから愛され、卑屈だから感謝感激、みたいな理由はついたけど、本人は努力なしだから、さいですか…嫌な世界だあ…みたいな感じがある。

これは、妖精が災害レベルの扱いだから妖精顔が忌避されているという異世界転生設定がまず面白い。そこで差別され、かつブスゆえの凶器扱いで性仕事させられて、歪みきってる攻めね。さらに上乗せで、オカマ。異世界にあんまり出て来ないけど、どんな環境でも女装家だったり、オカマだったりするキャラが出てもおかしくないよね。この攻めは女装家なのかな？それとも心は女に近いのかな？
ちょっとわかんないけど。

で、主人公。描かれ方は健気受けで、庇護され受け、超美形で、愛されラックを持っていて振りまいていくオーソドックスタイプ。主人公は美形の攻めを愛している。
でも相手がオカマなだけで、本当に主人公の株というか懐がぐんぐんに上がっていって、やがて見えなくなった。男だろうが女だろうがオカマだろうが愛してるって何かすごいな。読者にはオカマにしか見えないので、美醜逆転なのに主人公にはそのチートが全く無効になっているのが面白い。

【かくして見た事ないスパダリ受けが誕生した】

最後の方で、一生懸命健気な贈り物をした結果、誤解されて攻めにレイプされる展開がある。最初は、安易な嫉妬レイプに攻めにがっかりしたんだけど、その後の攻めの生い立ちを見て、あー卑屈キャラだからこうなるんだなあって納得してしまった。
卑屈ってそういうことだよな。。。

で、主人公が全く気にせず、重めの愛を返したところで、
主人公、マジリスペクト。

お前がナンバーワンだ。

こういうのさ、男女ノマだと、ピュアで強いヒロイン聖女化みたいで複雑なものが残るんだけど、受けがスパダリ化して、攻めがオカマだと全く気にならないな。（特殊）
お前がナンバーワンだ。（二度目）

受けが可愛い容姿で健気受けそのもの、やってることはスパダリで重めって、見た事のない世界を見せてもらいました。ぺこり。

健気かわいい男前受けの場合、暴走系、もしくは強引無口系の攻めが多くて、攻めの株が下がるもの多い。
（商業だけどたけうちりうとさんの書くものとか）
ボディガシリーズ１の受けの包容力と攻めのクズ行為よ…

相手がオカマだと、価値観や男女感がぐちゃぐちゃで不思議なカップル感が出来上がって、新感覚でした。