なろう作品感想：1件 (NL) 『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』

現在かなり楽しいアニメ化してホットなので、久々に読んでみました。前読んだ時（初心者）の感想は「面白いけどホラー」だったので、悪役令嬢読みすぎた現在（熟練者）ではどう思うのか知りたかった。

なろう作品感想：  悪役令嬢逆ハーでこってこてな爽やか作

もくじ
総評　<面白い>

★乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…
作者：山口悟　全50話　完結

【あらすじ引用】
頭を石にぶつけた拍子に前世の記憶を取り戻した。私、カタリナ・クラエス公爵令嬢八歳。高熱にうなされ、王子様の婚約者に決まり、ここが前世でやっていた乙女ゲームの世界であることに気付いた。
そして自分が主人公と攻略対象との恋路の邪魔をする悪役令嬢になってしまっていることに…主人公がハッピーエンドを迎えれば身一つで国外追放、バッドエンドならば攻略対象に殺されるって…
…私にハッピーなエンドなくない！？バッドオンリーなんですけど！？
なんとか破滅エンドを回避して、穏やかな老後を迎えたい！！


【なろう乙女ゲーの初心者＆熟練者向け】
悪役令嬢ものっていまだに次のブームが来てないぐらい女性向けで定番化しています。今は派生なのか婚約破棄大喜利みたいな感じになってるけど、これには必ず愚かなざまあ要員がセットなので、ちょっと疲れるよね。話作りの導入である失恋部分が大げさになってしまう。やっぱ悪役令嬢に転生したけど、破滅しないように頑張ります、ぐらいの方が気持ちが軽い。

久々に読んで思ったんですけど、読み慣れてくると嫌いになったり鼻につく設定をおおよそやってるなあということ。
前世思い出しによって性格が改変されすぎてもはや乗っ取り主人公、乙女ゲーのヒロイン役総乗っ取り、イベント乗っ取り、完璧な逆ハー、自己保身第一、相当なサイド使い（他者視点）……ヘタすると１Pの中の後半でサイドを使う回収の早さ。などなど。
でもあまりにてらいもなくハイテンポでやってくれるので、逆に色々読みすぎた後だと素直な作家だなあと微笑ましく読んでしまった。
初見の時、逆ハーすぎてホラーだなあと思ったんだけど、再読したらホラー感は感じず、最初期にしか書けない素直さというものを感じて眩しく思いました。（浄化）

これを慣れた後に書くと、ちょっとねっとりしたり色々痛々しいものが漏れ出してしまう気がします。うん。


【自己保身キャラなのに愛される訳】
じゃあ若い文章で総愛されの作品群を全部微笑ましく読めるかというとそうではないので、違いを考えて見た。

まず主人公は文章だけ見ると割と冷静だなあと思った。作者の筆致が意外と落ち着いているともいう。
本当に最初から断罪までびっくりするぐらい自己保身で動いているんだけどw、弟を救うのも自分の破滅フラグの為だし、弟や婚約者ジオルドやアランの恋路を折りまくっても、「これで自分の破滅がなくなった！」と素直に喜ぶセルフィッシュっぷりには覇王かな？って思うぐらい。
でも余計ないい訳をしないのも、からっとしていて良いかなって。（浄化）主人公のキャラ付けが野猿で、おもしれー女で、アホで、食い意地が張っている農業女なんだけれど（ひどい）、そういう子供みたいな色気のない子だけど、自己保身や自己中でもあることは意外と自然な気がする。ちびまる子ちゃんがお爺ちゃんの年金を狙うのと一緒で、人間ピュアな部分とずるい部分を両方持っているものですからね。

　まる子は純愛したり年金を狙ったりする

次に、前世の主人公がちゃんと愛されて楽しく生活していたという事。なろう（女）主は前世のトラウマが多いからね…。友達も家族もいて（兄が２人いるのも何かよし）、楽しく生活していたのに不慮の死。これが悲劇といえば悲劇なんだけど、人生においての日常といえば日常で、あっちゃんも彼女を糧に生きていくという本当に普通の立ち直り方をしている。（Overkilled meのリオンのような地に足のついた立ち直り方好きだ）そしてその生まれ変わりがソフィアであるという繫がりが、非常にエモいです。

さらにいうと、番外編でわかる人たらしっぷり。本編でサイドにて即回収してくれるメイン攻略対象の方たちは、まあわかりやすいカウンセリング恋愛と思ってもいいんだけど（実況でアニマルセラピーと言われていた）、サブキャラの恋愛じゃない落ち方している人達は、完全に主人公にあって楽しい人生に変わった人達ばかり。
正直言って、こっちの方がほろっときてしまった。こういうのに弱いんだ…。こっちの家族や関係者を含めて、ちゃんと人生を生きている感じがする。ママリナ（母）もちゃんと存在感があって良い。アニメの方の台詞だけど、マリアの母と会った後自分の母親に「会いたくなっちゃった！」って会いにいって叱られるのとか、すごい普通の女の子の感覚でよいなあと思った。主人公が攻略に関係ない所で、人を褒めたり慕ってたりする方がぐっときます。

んで、番外編まで色々読むと…、攻略を知っている乗っとり逆ハーじゃなくて、前世でも人たらししてたやつが悪役令嬢として生まれ変わって無双しただけという感じがひしひしとした。つよい。


【なんか切ないモラトリアム】
商業の方で、続きが出ているらしいが面白さは落ちているらしい。そりゃそうだろうなと思った。一度終わってるしね。
コミック絵好き　　続編で続いてるらしい

なんていうか逆ハーって短期間の切なさがあるよね。学生生活そのもののような。めっちゃモラトリアム。みんないくら主人公大好きでも、結婚するのは一人な訳で……、みんな結婚していくんだろうなと思うと…うっ……、大好きカタリナやってるのはこの学生の間だけと思うと、なんかね。楽しさと同時に切なさも感じてしまうんですけど、読み方間違ってるかな。

結局ジオルドと結婚しそうな気がする。しなかったら可哀想すぎる。
個人的にジオルドが第三王子というのが何か良くて好き。別に第一でも第二でもいいのに第三王子。なにげに王位来なさそう。このあたり前世で兄が２人みたいな謎の第三子推しを感じますね。


【アニメ化は偉大で上手いけど】
先に漫画化でその辺やってるのかもしれないけど、カタリナの脳内会議を３人から、５人にしたり（実況で猿卓会議とか五等分の浅知恵とか言われてたやつ）OPの楽しい感じも含め、なろう小説ってこういう原作の楽しいエッセンスをブラッシュアップしていくととても幸せな結婚になるんだなあ。特に漫画家の手が入ると、雰囲気が良い方に変わる原作いくつもみた。（白猫の話とか）
　漫画家さんのカラーで見事にフェアリー画風

じゃあなろうはただの原作素材かというと、そうでもない。アニオリになると見せ場を等分にしようとすることから、ただの逆ハーものになるという、不思議な現象が起こったり。悪くはないんだけど、やっぱり逆ハーが強過ぎると、ちょっと冷静になってしまうんだよね。

やはり原作は、不思議な魅力に溢れていたということかも。
素直なテンポでまとめたものが最善だったという。

そういう訳で、初心者と悪役令嬢もので疲れ切った方にお薦めかもしれない。もしかしたら心理状態次第で、ホラーだと感じるかもしれないけれど。

NLって表記したけど、明らかなゆりっこがいるし…百合の名称なんだっけ？GLも？

あとよく考えたら、主人公は恋愛してないやんけ…。
でも周りがしているから、まあ…いいか。


おまけでなろう乙女ゲーの世界観に似た乙女ゲー探して無理矢理ソムリエしてしまった…　も書きました。（適当）