なろう作品感想：２件 (NL) 『リリーは死ぬことにした、けどやっぱり生きることにした』『フォルトゥナ・ブラッド』

　感想

総評　<面白い>

★リリーは死ぬことにした、けどやっぱり生きることにした。

作者：夢扉　全38話～ 未完

【あらすじ引用】第一王女リリーは自分の婚約者と異母妹が恋仲にあることを知った。リリーがいる限り二人は結ばれない。愛しい皇子様のためにリリーは死ぬことにした。毒薬を呷った…が一口飲んだら前世の記憶が蘇ってきた！やだやだあたし、処女のまま死にたくないー！！

　設定は、妹だけ愛玩され婚約者も実質取られているというテンプレ。放置されて絶望したヒロインが、転生で中の人変わって生き直し。

ムーンだと時々いるけど、なろうでは珍しい（？）あらすじ明記のビッチヒロイン。ビッチはラインが難しい。ただの清純ヒロインの方が全然楽な気がする。でも清純も逆ハーが入ると舵取りが難しい。清純ぶって結果的にビッチとかになると、読者が何かがっかりする。
私は逆ハー好きなので、ある程度は許容できるけど、それでも好きな逆ハー作品はライン取りが絶妙だったりする。

　このヒロインは乗っ取り系。あたしという一人称も合ってるし、最初からクールで自分の欲に忠実で、読者がストレスを溜めない。耐え忍びもしない。健気を演じて同情させたり、色気で落としたりと搦め手の使い手いいぞ。イケメンを愛でているが、自分の方が大事な場合はさっと取捨選択。敵サイドにいる人をむやみに恨んだりしないが、冷静に嫌いだわって結論づけている。主人公をないがしろにした女官長に対する態度、かっこよかった。酷い事をしたヒーローとかを、ヒロインが聖母モードで許してたりまだ慕ってたりすると、まあイラッとしてしまうんだけど、興味ないわねって感じの距離感が心地よい。

　あれ、べた褒めだなあ（笑）クールなヒロインって一口に言っても、敵には暗黒微笑キャラだったり、有能ドヤ感がちらつきすぎたり、ヒロインってすごい塩梅が難しいと思う。たいていは仕事に集中するヒロインになるしね。そこをアンニュイビッチ。いいですね。

　このヒロイン、笑顔でいながら時々心から怒りを感じてたり、乗っ取ってしまった哀れなリリーを愛しく思ってたり、自分の恋心を殺された瞬間など、時々享楽的な性格に真剣さを感じる。ので好きになってしまう。前世スイーツビッチだった割に、妙に達観しているよね。

　実際リリーは肉体的には処女だから、精神がビッチってことね。色気でたぶらかした愛人はモブ騎士ヘンリー君だけ。どれぐらいの事を逢瀬でやっているのかわからないよねえ。キスとまさぐらせるだけで、騎士君はトリコになるんだろうか？だからこそいいなりになるのか？最後までしなくてもそれ以外はしてるのかも。中の人は正真正銘ビッチだった訳だし。

　モブかなと思った騎士ヘンリーが一番目立って唯一の愛人で、ただの裏切り婚約者かなと思った皇子が演技派私情なし堅物系で、一目惚れした男ルドは今んとこ引っ込んでて、兄貴っぽくなって陥落したチャラ騎士アベルは勝手に庇護者っぽくなってて…

　一応素の皇子に一瞬の恋愛感情が燃え上がったけど、さっくり恋心殺されて恋愛不可になってるしw　やっぱヘンリーかな。

皇子がリリーを影武者と思うのは仕方ないんですよね。実際中の人は変わってる訳だしあながち嘘ではない。あまりにも性格が変わると普通はそう思うよね、というまっとうな反応。少し不憫。

や、主人公のリリーかな！ですよねー。

　なろうでエタった話（未完）は避ける人もいるだろうけど、私はそれまでおもしろければ楽しんだという事で割とオーケー派。続いていくと、全く面白くなくなって終わる（続く）パターンと失望度は一緒かなと思う。完結マークだして、終わってない小説（単なるマーク詐欺）とかもあるからね…そっちのがやだわ。

　ただ話はまだ半ばぐらいかな？って思うし、どうなるか気になるなあ。主人公がかっこいいだけに、ただただ展開が気になる！妹は無邪気に男の心とったつもりでいるけど、皇子は全くその気ないからまーそんな腹は立たない。皇子が不本意な展開になる事は何か想像出来る。リリーからは完全にシャットアウトされてしまったし。王宮に戻るんだから、皇子との仲が焦点になるのかなー。誰とくっつくか。モブ騎士君以外出遅れてる。

　でもこの話に似合うのは、男をたくさん侍らせて寵を競わせるリリー女王エンドだな！タグにギャグがあるから、きっと最後にはべらせすぎちゃってもはやギャグだよ！ってなるんだ。うん。

『○○は死ぬ事にした』って発祥は何なんだろう。今作のロングタイトルはすき。毎回のタイトルもよかった。

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総評　<ふつう>

★フォルトゥナ・ブラッド

作者：：廣瀬　全72話

【あらすじ引用】国を滅ぼされた元王女キアラは、遭難した船から救助された際、生き別れた家臣の息子ディゼルトと再会する。敵国エニグミスタで働き始めた彼女は、ディゼルトが画策する復讐を止めようとするが、それによって故郷をめぐる病気と紛争の嵐にまきこまれる。いっぽうエニグミスタ公爵姫ジェニアは、王太子妃に内定したものの一年前に出会ったディゼルトを思い切れずにいた。また、王太子ヴェーロは、みずからが滅ぼしたフォルトゥナの王女が忘れられない。 砂漠のなかの花咲く国、一夜にして滅んだ伝説の国フォルトゥナをめぐる、因縁のものがたり。

　１話が重すぎて目を疑いましたよ。まー１０歳含む女たちが海賊に捕われて暴行されるとかですでにベリーハード極まれりなんだけど、さらに遭難して他の人が次々と食われて一人残されるみたいな匂わし…。助けた男達がそこには誰も触れなかったけど（重すぎるのでそれでいいのかもしれないが）、飢えたからカニバるってこの世界の海賊やばない？ゲームオブスローンズでも人食族は蛮族っぽい感じだったぞ。フォールアウト３のレイダーじゃん。

（無法者達で、人肉食ったり飾ったりとヒャッハーで楽しそうな人達のこと。あの世界ではお茶目ですらある）

　




こういう世界で許されるやつ


確かに洋ゲー、洋ドラには結構出て来るよ。逸脱した者として。この世界って海賊もレイダーレベルなんだって、世界観に震えた。主人公たちが犯されるとか、しかもそれが初めてじゃないとか、ムーンかと思った。この主人公強過ぎる。人生２週目じゃないかな。

　一夜にして滅んだといわれる伝説の砂漠の国フォルトゥナ。砂漠だけど水が溢れ、おまけに鍛冶が発展して武器製作に長けている。綺麗な幻の風景や、青い布でぐるぐる巻いたアルトロという自由の遊牧民など、視覚的に想像してしまう美しさ。特に作中屈指の爽やかキャラトランスは、アルトロの布を落として出て来るのは銀糸の髪。美しいよね。

　話も、復讐を企てる幼馴染みのディゼルトの反乱という大きな事件がエンディングに向かってぽんぽんぽんと進んで行く。それを止めようとするヒロインと、彼女に恋する大国の王太子ヴェーロ。それぞれねっとりする事無く心理を描写して、71話ですぱっと終わっている。

長過ぎず読みやすくて良かった。

　でもなんていうか、あまりにも話としての動力が大きすぎてキャラに入り込めなかったなあ。別にキャラが人形っぽかったというつもりもないんだけど、主人公が完璧すぎて（？）神話の人物的な。そしてそのメイン周りは役が強すぎて勝手に主人公を犠牲にしすぎ。ヒーロー不在。トランスが弟でなければな……。でもそうしないと話が…。

そういう訳で、総評がふつうに。話は面白かったんだけど、後を引くものがなかったなあという観点で。後日談を見ると、キャラ達は幸せそうですよね。

　そういう教育を受けてきたとしか考えられないけれど、凡人読者にとって、敵に復讐をしない事とと、家族と国を滅ぼされ辛酸を舐めさせられた10年の恨みがないことが同列で繋がらない。復讐しなくても、恐怖や怒りや恨みはあるでしょう？達観しすぎだよ。別人の意識が入ってるとかしても納得しちゃうよ。あの１話を読んでドン引きすると共に引き込まれた私としては、ほぼノーダメみたいな主人公に「へえ…そう…？」って感じ。覚悟完了しすぎィ！あ、男性恐怖とかは少しあったけどあんなんあって普通レベルだから。むしろ、肉恐怖症、対人恐怖症とかあっても許した。まーそこでノタノタしないから話がさっさとすすんで…読みやすいんだが。

　しかも滅ぼされた理由が金、嫉妬、病気への恐怖とか極めて普通だし。まー砂漠の水脈みたいな豊かな王国だったけど、あらゆる意味でフォルトゥナは負けたというはよくわかる。色んな勝負に負けて、国は滅びる。弱いから負けた。しかしそれを受け入れるのと、王子に何も思わないというのは別じゃないの。国民がどんどん水に飛び込んで行くとか、トラウマでしょ。もちろんそれを何回も問われている場面があるんだけど、主人公の答えに納得なんかできないよねー。

と思って読んでたら、最後の最後にそれは（恨み無し）思い込んでいただけで、実は恨んでいるかよくわからないと言ってましたね。

助けられた事への感謝と人間関係に感謝しているから、敵国エニグミスタを守るって言ってたけれど、その交流部分もっと長くてもよかったかなあ。多分お姫様と交流しなくても同じ事してたよねこの覚悟完了ヒロイン。例えばこの１０年の５年位はこの国で保護されていたとかさー。養父母とかいてさー。海賊はたまたま攫われたって事でさー。

……ついついカニバリズム海賊のインパクトが大きすぎて、海賊の活用を妄想してしまう。（笑）もっと蛮族にして、カニバリズム海賊がフォルトゥナ滅亡の引き金を引いたってことにしよう。（何で）海賊がフォルトゥナの武器を使っていたんだよ！それだ。

　不在だと思います。主人公と対である幼馴染みは、最終的に棚ぼた夫になりますが（彼だけが非常に救われている）ヒーローではないんだよね。どうみても。彼の復讐心がばれたシーンでヒロインを押し倒して欲情しているんだが、「他の奴にも触らせたんだろ？」みたいな事をレイプされたヒロインに言ってるんだけどこれ 三下の台詞……

その時点であ、ヒーローじゃないんだなって思ったので、最終的に心中みたいになって、処されそうになったシーンがきても、この二人は話的に対なんだなーって思ってたんですけど。ヒロインが今まで一目で好きになった相手は、男でトランスだけだしね。

ヒロインを騙したり跪いたり……最後まで自分の思うままに生きてましたね、君。ヒロインの為にした事が少な過ぎる。。。

（結果的にフォルトゥナ復興になった事はラッキーなだけです）

いや、わかるよ。ヒロインにとって、恋愛感情じゃなくて復興する街のリーダーの配偶者としてディゼルトさんを選んだんだよね。くっそー最後まで覚悟完了ヒロインだわ。さすがだわ。

敵役の王太子ヴェーロは、最後までずっと王として役がつよすぎた。唯一の恋愛要素の人だけど。（片思いだが）全く逸脱しないんだもん。フォルトゥナを滅ぼした事も、数ある戦争の一つだし、ただのフォルトゥナ人だと思ったヒロインに簡単に謝っちゃうし（傲岸）、王妃としてぴったりと思ったジェニアは絶対離さないし。

10年前のヒロインはさすがにロリだったから、思い出補正の一目惚れの動機は少し薄いと思うんだよなあ。今のヒロインを気に入ったから手に入れようとしていたと思う。で、ただの勇敢なフォルトゥナ人だと後宮にいれられるけど、王女だと怒りで処刑なの？

政治的にそんな駄目かなあ。黒幕じゃないってわかっても？

プロパガンダ通り、結婚したってよかったじゃない。

ここ、王として決断したことで個人としては処刑したくないって言ってるけど、男として騙された怒りな気がしちゃってねえ。かといってヤンデレの感じでもないし。王としては不都合ない訳ですし。

あの夜に無理矢理抱いてたり、ヤンデレ化してたらヒーローっぽい存在感は出せたのに。

まあその後ジェニアと仲良くやってるから、ヒーロー感だされてもあれだけど。その御代で側室５人ぐらいいれて、より王としてのロールっぷりを見せつけてくれるだろう。

恋愛要素のヴェーロとは一体なんだったのか……

　何かヒロインは１話だけで判明した部分だけで、他のヒーロー達（幼馴染みと敵の王子）が経験した辛い事より勝ってる気がしちゃってなあ。。。それを全て克服して恨みの一つもないヒロインと比べると、ちゃっちくなってしまう。というかヒロインが人生２週目すぎるんだけども。

クルオーレがサブキャラでは人間味みせてくれた気がする。最初は信用しておらず、その後事情を知るに従って素直に味方よりの目線でいてくれた。先生はまあたいして参戦しなかったからね…。

女子のメインメンバーのジェニアにしても、隙がありつつ賢くて、ホント役を逸脱しなかった。王家カップルはそれが一番賢いよねという位置からつくづく出なかったなあ。

爽やかトランスが、一番かっこいいのは言うまでもない。